フライング通算94本!上島久男の生涯

2026年7月25日、ボートレース鳴門で行われた「にっぽん未来プロジェクト競走in鳴門」4日目12R。1号艇でインコースからコンマ02のフライングに散った田頭実は、これで通算フライング本数が89本となり、藤原辰馬を抜いて歴代単独2位に浮上した。

現役レーサーとして異例ともいえるフライング記録を積み重ねてきた田頭実だが、ボートレース界にはかつて、さらにその上をいく「フライング王」と呼ばれた男がいた。

その名は、上島久男。

「稀代のアウト屋」として知られ、スタートを攻め続けた上島久男は、現役41年間で94本のフライングを記録したとされる。田頭実が歴代2位に浮上したことで、あらためて注目されることになった上島久男とは、いったいどのようなボートレーサーだったのか。

通算フライング記録ベスト10

※2026年7月25日時点

順位選手名通算F
1位上島久男94本
2位田頭実(現役)89本
3位藤原辰馬88本
4位貴田宏一77本
5位西島義則(現役)77本
6位長嶺豊76本
7位関忠志76本
8位原由樹夫75本
9位吉田茂幸74本
10位早瀬薫平73本

この日のフライングにて歴代2位に浮上した田頭実もフライングのイメージが強い選手ですが、まだ5本差を付けてトップに君臨をしています。

上島久男とは

プロフィール

氏名上島久男
登録番号2447
登録期30期
生年月日1948年3月4日
支部愛知
身長169cm
現役期間1970年8月~2011年7月
優勝回数20回

上島久男のレーススタイル

「稀代のアウト屋」と呼ばれた異色のレーサー

上島久男を語るうえで欠かせないのが、徹底したアウトコースへのこだわりだ。

ボートレースでは一般的にインコースが有利とされるが、上島久男はそのセオリーにとらわれず、ダッシュコースからのスタート勝負を武器としていた。アウトコースから鋭いスタートを決め、一気にまくる攻撃的なレーススタイルは、ファンから「稀代のアウト屋」と呼ばれるほどだった。

単に大外から走るだけではなく、スタートを武器にして自ら展開を作り出す。これが上島久男の最大の持ち味だった。

58歳でもチルト3度・6コースから勝負


上島久男のレーススタイルを象徴するのが、2006年8月の平和島優勝戦。

当時58歳だった上島はチルトを3度に設定し、6コースからコンマ01のトップスタートを決めると、豪快なまくりで優勝。

50代後半のベテランレーサーが、チルト3度の伸び型セッティングで大外からトップスタートを決めて勝ち切る。まさに「稀代のアウト屋」と呼ばれた上島久男らしいレースだった。

スタートを武器に勝率6点台を記録した実力派

フライングの多さや個性的なレーススタイルが注目されがちな上島久男だが、決してスタートだけの選手ではなかった。

1990年代後半には勝率6点台を記録した時期もあり、3連対率も高い水準を残している。攻撃的なスタートで展開を作り出し、そこから勝利につなげるだけの確かな実力を持っていた。

「フライング王」や「アウト屋」という強烈な個性の裏側には、長年にわたって結果を残してきた実力派レーサーとしての一面もあった。

上島久男とフライング

スタートの目標は「コンマ00」

フライングスタート フライング

上島久男のフライングの多さを理解するには、本人のスタートに対する考え方を知る必要がある。

上島はスタートに対して非常に強いこだわりを持ち、目標タイミングはコンマ00だったとされる。

もちろん、コンマ00を狙えばフライングの危険性は高くなる。それでも、スタートで無理にアジャストして速度を落とすよりも、自分が行けると感じたときには最後まで踏み込む。これが上島久男のスタートに対する姿勢だった。

フライングをしてもスタートを攻め続けた


上島久男のスタートへのこだわりを象徴するのが、通算1500勝を達成したレースだ。

このレースで上島はコンマ01のトップスタートを決めたが、そのわずか3日前にはフライングをしていたという。

通常であれば、フライング直後はスタートに対して慎重になっても不思議ではない。しかし、上島久男はスタートを攻める姿勢を変えなかった。

フライングをしたから次は控えるのではなく、自分が行けると思ったスタートを行く。そこには、フライングを恐れて自分のレーススタイルを変えることを嫌う、上島久男の勝負師としての姿勢が表れている。

94本のフライングは「攻め続けた証」

通算94本という数字だけを見れば、非常に多くのフライングを重ねた選手という印象を受ける。

しかし、その背景にあったのは、長年にわたってスタートを攻め続けた上島久男のレーススタイルだった。

フライングを恐れず無謀にスタートを踏み込んでいたというよりも、「自分のスタートを曲げない」という考え方を貫いた結果として、94本という記録にたどり着いたと見ることができる。

上島久男にとってフライングは、単なる失敗の積み重ねではなく、スタートを武器に戦い続けたレーサー人生の裏返しでもあった。

上島久男が育てた弟子たち

池田浩二や平本真之らを育てた名伯楽

上島久男は、自身のレーススタイルだけでなく、後進の育成という面でもボートレース界に大きな足跡を残している。

主な弟子として知られているのが、池田浩二や平本真之、永井聖美らだ。

自らは「稀代のアウト屋」としてスタート勝負を貫いた上島だが、その背中を追った弟子たちからは、愛知支部を代表するトップレーサーが数多く育っていった。

自身とは異なるスタイルのトップレーサーを輩出

興味深いのは、上島久男の弟子たちが、必ずしも師匠と同じアウト屋になったわけではないことだ。

上島自身はアウトコースからのスタート勝負を得意としていた一方、池田浩二や平本真之はイン戦を含めた自在なレース運びでトップレーサーへと成長した。

つまり、上島久男は自分のレーススタイルをそのまま弟子に押しつけたのではなく、スタートに対する考え方や勝負に挑む姿勢を伝えながら、それぞれの選手が持つ個性や才能を伸ばしていったと考えられる。

K

平本真之は凄い選手として師匠の名前を挙げており、「いつまでも自分も若々しいレースをしたい」とそのスタイルをいつまでも忘れないことを誓っています

スタートへのこだわりと勝負師の姿勢を伝えた

上島久男が弟子たちに伝えたものは、単純な技術だけではなかったのかもしれない。

自らが長年にわたってスタートを攻め続け、フライングを重ねながらもレーススタイルを貫いたように、勝負に対して積極的に挑む姿勢を持っていた。

その一方で、弟子たちはそれぞれ異なるレーススタイルを確立している。

自らは「稀代のアウト屋」としてボートレース史に名を残し、弟子たちにはそれぞれの道を歩ませた。上島久男は、レーサーとしてだけでなく、後進を育てる指導者としても大きな存在だった。

B-DASH

上島久男はかつて「B-DASH」というプロペラグループを設立。現在は池田浩二が引き継いだエテルニータの前身となっています。

弟子の池田浩二、平本真之らを筆頭に数々の選手達がこの場所で様々な意見を交換しながら互いに切磋琢磨しており、師匠として持ちペラ時代に弟子たちのプロペラを製作。レースに集中できる環境を提供し支え続けました。

そんな上島久男は弟子たちのスタートについては厳しくフライングを切らないように指示をしていました。

「上島久男の94本を抜いてくれ」と言われた田頭実

田頭実 アイキャッチ

田頭実は、自身のフライングの多さについて語る中で、周囲から「上島久男の94本を抜いてくれ」と言われていることを明かしていたという。

田頭実自身も「俺にとってはスタートしか魅力がない」という趣旨の発言を残しており、スタートを最大の武器としてレースを続けてきた。

そんな田頭実が2026年7月25日、鳴門12Rでコンマ02のフライング。通算フライングは89本となり、藤原辰馬を抜いて歴代単独2位に浮上した。

上島久男の94本まで、あと5本。

この記録を抜くということは決して名誉なことではありませんが、その記録に手が届くところまで迫っている。

上島久男の現役引退とその最後

41年間の現役生活に幕


上島久男は1970年8月にデビューすると、約41年間にわたってボートレーサーとして走り続けた。

「稀代のアウト屋」と呼ばれ、スタートを武器にアウトコースからのまくりを狙い続けた上島は、2011年7月に現役を引退。

通算94本のフライングという歴代最多級の記録を残しながら、通算1500勝も達成するなど、強烈な個性と確かな実力を兼ね備えたレーサーとして現役生活を終えた。

弟子の活躍を見届けた後、食道がんで死去

現役引退後も、上島久男は池田浩二や平本真之ら、愛知支部の後進を育てた師匠としてボートレース界に関わり続けた。

師匠として弟子たちの成長を見守る一方、2011年には池田浩二がSGの賞金王決定戦を制して初の賞金王に輝いている。自らはビッグタイトルを手にすることができなかった上島だが、長年指導してきた弟子が頂点に立ったことは、師匠として大きな意味を持つ出来事だった。

しかし、引退から数年後の2015年、上島久男は食道がんのため亡くなった。66歳だったと伝えられている。

上島久男の訃報を受け、元ボートレーサーの日高逸子も、かつて平和島で見た上島の豪快なレースを振り返り、その死を悼んでいる。

最後まで記憶に残ったのは、58歳でチルト3度・6コースからコンマ01のスタートを決めて優勝した姿。そして、フライングを恐れることなくスタートを攻め続けた、稀代のアウト屋としての姿だった。

通算94本のフライングという記録は、今も上島久男の名前とともに残り続けている。

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まとめ


上島久男は、通算94本のフライングを記録した「フライング王」であり、「稀代のアウト屋」と呼ばれたボートレーサーだった。

スタートを攻め続ける独自のスタイルを貫き、現役引退後は池田浩二らを育てる師匠としても活躍。

田頭実のフライングによって再び注目を集めた94本という記録は、上島久男が生涯にわたってスタートを攻め続けた証とも言えるだろう。

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