
江口晃生(群馬)が公益社団法人日本モーターボート選手会の次期選手会長に就任することが2026年5月12日に明らかになりました。
2022年より前任の上瀧和則より会長の座に就いた瓜生正義が4年間に渡り務めましたが、今回は現会長に加え常務理事を務める小畑実成との3者による投票が行われ当選の運びとなりました。
なお上瀧和則、瓜生正義と続いた「戦う選手会長」ではなく従来の常勤の職務に専念する方針を示しており、選手登録を残したままの事実上の現役引退となります。
江口晃生 選手情報

| 支部 | 期 |
|---|---|
| 群馬 | 54 |
通算2700勝のレジェンド
1984年デビューで40年以上現役生活を続けている江口晃生。
1998年にチャレンジカップ、2005年にオーシャンカップと2度のSG優勝も飾る実力者です。
4月に通算2700勝を優勝で飾り今期もA1級圏内をキープしていました。
毒島誠の師匠

群馬支部、そして日本を代表するボートレーサーの1人である毒島誠の師匠。
デビュー当時から厳しく接し続け「あの人(江口晃生)の下で頑張ってるね」と言われることも珍しくありませんでした。
しかしデビュー戦の時に1マークで飛沫が上がった際、瞬間的に逆にハンドルを切り事故防止を行った姿を見て「この子は稼ぐ」と確信するものが江口晃生の中にはありました。
2019年には両者共に斡旋をされたSGボートレースダービーにて弟子の優勝をピットで観戦。
1号艇でしっかりと逃げ切り帰って来た毒島誠は大粒の涙を流し思わず抱き付き「強かったな!」、「人として強くなった」と弟子の活躍を賞賛しました。
競艇を貫く
コース取りを果敢に狙うインファイターで「俺には友達などいない」と常に孤独との戦いを口にしています。
自分がやっているのは「競艇でありボートレースではない」と横の繋がりが違い当たり前になっている業界や選手同士の関係について度々苦言を呈しています。

今年に入ってからも群馬支部所属ながら赤城雷神杯への斡旋が入らなかったことを記者に聞かれ
「知らねえよー!桐生走ると局長、社長、会長に散々、文句言うし、レースがぐちゃぐちゃになるから嫌だったんじゃないの。しょうがないじゃん、俺の生き様なんだから。走らせてもらうために、いい子になるように頑張ると書いといて」と回答をしています。
しかしその一方で自分の戦い方が快く思われていないこと、そして時代に合っていないことは誰よりも理解をしていました。
自身の人生観を変えた出来事
今回会長職に就任が決定した江口晃生ですが、ここまでの話を聞くと「昔気質な時代に取り残された選手」と疑問を抱くかもしれません。
しかし、これまでのレーサー人生の中で体験してきた危機やその出来事や考えは今回の会長職就任を決断する出来事に繋がっていきました。
桐生存続閉鎖問題

今でこそナイター開催で売り上げの中核を担うボートレース桐生ですが、1991年をピークに毎年のように売り上げが伸び悩み当時の施工者だった桐生市は2003年での閉鎖を検討。
結果として阿左美水園競艇組合が施工者を引き継ぐ形で存続が決定。その後の市町村の合併により現在のみどり市が施工者を引き継ぐ形となりました。
この際に桐生市を拡大する計画も挙がる中、元々の施工者であった桐生市など一部の市町村が競艇事業への反対の意を示したことでプランが白紙になるほどボートレース桐生は邪見な存在とされていました。
この当時の出来事を選手として経験している江口晃生は「自分の職場が無くなったらどうしよう」、「自分の大事な地元が無くなる」という気持ちと同時に「自分がお世話になった人たちの職場が無くなる」ことに危機感を覚え自身に何かできることは無いか?と考え関係者にボートレース場のグッズ販売の企画書を提出することもありました。

しかしこれらの行動に対して
「気持ちは伝わるが説得力がない」
と話が進むことは無かったと振り返っており、それは同時に自身の今後の人生を大きく変える出来事へと繋がっていきます。
大学院進学

自身の息子が早稲田大学に進学しスポーツビジネス修士課程1年制の存在を知ると早稲田大学院を受験。
当初は勉学に集中する方針も「レースに行きながら勉強をしていきましょう」と言われたことをきっかけに43歳にして二刀流レーサーとして活動を続けました。
※持ちペラ制度の末期であったこの頃、自身のプロペラ製作は柴田光ら弟子たちが協力
この際に発表した卒業論文「競艇界のさらなる発展に向けた改善策に関する研究」は全70ページにも及び業界関係者などからの意見を反映。
その内容が認められ優秀論文賞を受賞しています。
以下では当時のボートレース界が抱えていた問題の一部を紹介。
この多くは現在実現に至っており、本人は否定こそしていますが業界の発展に大きく貢献することとなりました。
プロペラ制度の変更

この当時、選手それぞれがプロペラをレース場に持参する「持ちペラ制度」が導入されていました。
しかし、江口晃生がこの当時438名の選手を対象として行ったアンケートでは全体の76%の選手がオーナーズペラ制度の導入、もしくはどちらとも言えないと回答をしています。
この調査から約3年後の2012年4月より現在のオーナーズペラ制度が導入され選手が仕事とそれ以外の時間の切り替えが上手くいくようになりました。

今なお復活が期待される制度ですが、選手間の過半数が望まない制度であることが数字として表れています。
ミッドナイトボートレースの導入
ナイターレースとそれ以外の時間の売上の違いに触れつつ、更なる発展として「ミッドナイトレースを実施することで、特に若い世代に対して大きくアピールする事ができるのではないか」を2009年当時から提案。
2021年10月より導入されたこのシステムは今では日常的な風景となりつつあり、売上にも大きく貢献をしていますが当時より具体的な方針、展望を掲げていた貴重な内容となっています。
電子マネー決済の導入
キャッシュレス社会と言われ現金を持たない現代人が珍しくありませんが、決済方法の多様化を提案。
具体的にはクレジットカード、電子マネーによる決済方法を挙げており当時の1人当たりの所有枚数や発行枚数をグラフ化しています。
舟券の購入方法は本場の場合は各ボートレース場ごとのキャッシュレス専用カードか現金、そしてネットは銀行の入出金を基にしたテレボートでの購入と定められているのに対し、他のギャンブルでは決済方法の多様化が進んでいます。
クレジットカードの利用はギャンブル依存症の観点より実現は厳しいかもしれませんが、PayPayを代表とした電子マネー決済の導入が今回の会長就任により実現に至るかもしれません。
分煙化の実施
今でこそ若い方や子供連れまで来場が珍しくないボートレース場ですが平成中期と言えば「鉄火場」のイメージが強く人を寄せ付けない独特の雰囲気が存在していました。
ここに着目をした江口晃生はボートレース場の分煙化によって来場者の獲得につながるのではないか?ということを関係者の調査や自身の考えから提案しています。
今ではどのボートレース場でも喫煙スペースが設置され、値上がりや世間的な風潮もあり喫煙者の形見は狭くなりつつありますが、新期の来場者を阻んでいるのは悲しくも来場者であることが窺えます。
恐れるな。挑め
2011年には「人生の熟練者=ベテランの言葉に耳を傾けてみませんか?」をテーマに工藤公康、武豊、中澤佑二など角界の著名人との対談をまとめた「ベテラン力 極みに挑み続ける男達の才覚(ぶんか社)」より出版。
そんな江口晃生の座右の銘は「恐れるな。挑め」という言葉です。
成功の反対は失敗ではなく、何もしないこと。失敗は成功するための武器になるという考えが込められており弟子の毒島誠らにも伝承されています。
かつては生涯現役を口にしながら選手を事実上引退する形で現場の最前線に立つことを決断したのも長らく抱えていた「業界へ恩返しをしたい」という思いと「新たなる挑戦を恐れない気持ち」があってのことでしょう。
まとめ
あまりにも突然すぎる江口晃生の会長職就任と事実上の引退。
かつて会長職を務めた上瀧和則は「現場の声や景色を知らない選手会長はボートレースだけ」ということに危機感を抱き戦う選手会長として会長職中期から末期を駆け抜け現会長の瓜生正義へその座を渡しました。
そして瓜生正義は現役選手会長として史上初となるG1優勝、SG戦線でもトップ選手として活躍。
時には自身が出場をしないSGレースであってもスーツ姿で現場へ駆けつけるなど活動にも着手を続けました。
今回再び常勤の会長システムへと戻る形となりましたが、これが果たして良い方向に出るか、悪い方向に出るかは定かではありません。
しかし業界を変えたい、良い方向へと進めたいという思いが強い江口晃生であればまたボートレース界に新たな景色を生み出してくれる・・・そんな期待を抱くのは私だけでしょうか?
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